さわらいど

さわらいど

ブルベ6年目の大学生→社会人。主に自転車ロングライドが中心。山形転勤おじさん。酒田の地から。

小江戸大江戸91km -1- touch A

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あぜ道を蹂躙するかのように整備された幹線道路。日本中の至る場所で見ることができるロードサイド店の照明と対向車のヘッドライト。やたら眩しく、時折苛つく。でもその光があることで僕は家に向かって近づいていることを確信できて、少し安心する。

 そんなモノローグを考えている余裕もないくらいには焦っていた。制限時間は残り1時間40分、あと距離は10キロ。綺麗に工事されている車道とは異なり、おまけ程度に作られたのであろう歩道は凹凸が酷く、何度も脚を引っ掛けて転倒しそうになり、ようやく身体を支える。ヘッドライト2灯が自分の進むべき道を照らしていた。前を走っている人の名前は知らない。「この人がいなければゆっくり走れるのにな」なんて思いつつ、なんとかついていく。ほぼ歩いていた僕のペースはキロ2分程上がり、少しだけど、調子を取り戻した。

 やがてファミマが見えると、その人は「僕はここでトイレ行くから、ここからは頑張ってね」と言い、再び僕はひとりぼっちとなった。「ここからは」という単語が胸に妙に引っかかる。考え過ぎなのかもしれないが、ひょっとして、僕を引っ張ってくれたのではないだろうか?

そう思うと、さっきより走れる気がした。

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  小江戸大江戸91km。人生初のウルトラマラソンはこれを走ろう。昨年11月にエントリーボタンを押して後には戻れなくなった。元々、いつか走ってみたいとは思っていた。きっかけなんて極めて下心的で2年前ほど友達の女の子と飲んでいた時に「出よう!」という話になったから。*1そこからtwitterウルトラマラソンの話をしているうちにがくさんととりさんが小江戸大江戸の話題を教えてくれた。

 概要はHPを見てもらえばいいのだけど、この大会はざっくり言うと91kmを走る「小江戸」113kmを走る「大江戸」、その2つを組み合わせた「小江戸大江戸」の3つがある。小江戸大江戸は203kmと230kmの2つがあり、確か230kmはギリシャで行われる「スパルタスロン」への参加資格を得るための部門だったはずだ。

http://trainic-world.org/coedo-oedo/about

  • 91km:制限時間14時間
  • 203km:制限時間36時間
  • 230km:制限時間36時間

コースは小江戸、大江戸共に埼玉の川越からスタート。熊谷まで北上し寄居方面へ進み、R254.沿いに再び川越に着くようになっている。

小江戸はここで終了、大江戸は更にここから大江戸・東京方面へ南進。新宿や東京タワー、六本木や浅草寺を経て荒川の河川敷沿いに”また”川越へ戻ってくるのだ。これが203km部門。

ちなみに、230kmは川越に着いたらまた荒川沿いに戻ってぐるっと回って3度目の川越でフィニッシュだ。

https://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=45b8b393473d672dc85daea6ce501f06

なんてクレイジー!自転車ではそんなこと言えるほどではない距離だけど、この距離を自分の脚で走るだと?未だに信じることができていない。2017年にとりさんを応援しに行って、自分の眼で見てみたけれど最後まで現実味が湧かなかったのだ。f:id:o_sworks:20180313123952j:plain

2017年のとりさんの勇姿



というわけで、僕は91kmの部にエントリーをした。経験豊富なとりさんがいること、がくさんも完走経験があってとても頼もしい、



  そうして迎えた大会前週の平日、僕は全く走っていなかったし、走れてもいなかった。直前になるほど自分が準備不足だなあという感覚に陥ってしまい、現実を見たくないこともあり、全く走らならかった。強いて言い訳をさせて貰うのであれば、仕事で帰りが遅くなっていたのもひとつだろう。明日は完走できるのか、そもそも完走してやろうという気概もあまりなかった。それでも大会の前週にはモンベルストアでヘッ電やランニング用のインナーを買ったり、1ヶ月近く前には西湖のフルマラソンを完走したりと、言ってしまえば準備の前借りをしていたのかと、今はそう思う。

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モンベル会員になりました。


 

 


大会前日の夜もやる気が湧かず、日を跨いで深夜2時近くの就寝となった。寝起きは午前5時半頃。眠すぎて予定より1本遅い電車に乗り、スタート会場に近いJR川越駅で降車。受付は7時30分迄となっているので焦っていた。音楽も聴き、少しずつテンションを上げようと試みるが気持ちは高揚しない。川越駅から、スタート/ゴール地点の連繫(れんけい)寺までの道中は15分程掛かる。寺に近づくにつれ、大会参加者/スタッフの姿が散見される。

不思議なことに連繫寺に着いた時には不安や走りたくないということを考えることは無くなっていた。ただ、その場にいる人達が醸し出す雰囲気-ランドヌール(ズ)感に飲み込まれていた。

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―なんか、普段の大会より緊張感がないぞ?

フルマラソンのスタート前のほうがもっと沈黙していて、なんというか某コピペのように殺伐としていてすっこんでいろという感じなのに、この大会は言ってしまえば小規模で至る所で談笑が聞こえて心地よい。この大会を走ろうという人たちはある程度限られているからそれぞれのチーム員の応援や参加者同士のコミュニティが構築されやすいんだろうななあと思う。

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 荷物預け場に向かう途中でとりさんに遭遇した。談笑しつつ、スタートの時を迎えるのを待つ。ちなみに僕はチーム亀太郎所属で登録しているのに対してとりさんはAJたまがわでの登録(しかもAJたまがわのたまちゃんジャージ!!)だ。所詮某クラブの賛助会員の僕はまだまだ愛が足りないのかもしれない。(ジャージ持ってないんです…)

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午前8時、スタートの号砲が鳴り響く。とは言えすぐには出発はできない。スタートゲート前にあるスイッチにICタグをタッチしてから計測開始となるのだけど、ここで5分程渋滞が発生するからだ。前の人が1人またひとりとタッチし走り出していく。ついに自分の番。勢い良く触りいよいよ91km先へ進みはじめた。


 

*1:ありがとうございます。結局その子とはウルトラ走れてませんが