福男参戦歴 2015 関東からやってきた
はじめに
2015年の年明けに、僕は「福男選び」に出るために、東京から単身兵庫県西宮市まで遠征したことがあります。
同期は、大学の友達にそそのかされ、「一緒に出ようぜ!」と言われたこと。気づいたら単身でトライすることになりました。
で、右も左も分からない人間が弾丸で福男選びに出たらどうなったのかということを、この記事では書いていこうかなと思います。
【福男選びって?】
福男選びー正式名称を「開門神事福男選び」と呼ばれるこの神事は、毎年1月10日の午前6時に行われます。神社の門から一斉に人が全力疾走をする光景はテレビで一度は見たことがあるのではないでしょうか。
アレです。
今回は、「初見で行ける西宮福男選び」をテーマに、はじめての方でも、地方在住の方でも福男に出るにあたってのガイドみたいなことを書きました。*1
【誰を対象に書くか】
今回のターゲットは
①福男選びに関西圏以外から行きたい人(今回は関東圏を中心に)
②ホテルにできるだけ頼らず、弾丸でいきたい人
この2点に該当する人を参考に話を進めていきたいと思います。
言い換えると、
・地元在住でない+地元の人間のサポートがない方
・関東から単独で参戦してきたかつ、ホテル泊を選択せず福男に挑む方
が対象ともいえます。
更に、③運良く抽選を突破し、開門と同時にスタートできる320人中のひとりになった人 *2も対象です。筆者は2015年の福男選びで320人中のひとりとして参加したので、基本はその経験から話していきます。
※ちなみに筆者は260番手くらいからのスタートでしたが、開門と同時に前のおっちゃんが盛大にコケたため、私は赤門に肩の切り傷をつけ、早くも戦線離脱することになってしまいました。福男選びは位置取り合戦です。
【福男選びに参加するにあたり、心がけておくこと・知っておくこと】
・誰でも参加できるのか?
福男選びに参加する前、僕はその単語をイメージすると、「大勢の男が神社の門から一斉に走り出していく」ということで、「男」しか参加できないお祭りなのだと思っていました。
ですが、そんなことはぜんぜんないのです。女性も参加できます。というか、性別は関係ないのです。毎年一番福を貰うのが「男」なので「福男」と言われるようになったのでしょう。
では、女性の場合何と呼ばれるのでしょうか?過去何度も二番福になり、現在は円滑に神事を進行させるための実行委員会「開門神事保存会」の講長でもある平尾亮さんは以下のように記述しています。
補足:
「福男」という呼び名ですが、老若男女誰でも参加できます。近年では特に女性の参加者が増加し、参加者の2~3割は女性が占めるようになりました。(女性が3番までに入ると「福女」として認定されます) 「福男選びとは?」より
まだ「福女」の称号を貰った方は2016年現在まだ出ていません。僕が参戦した時にも女性の参加者はチラホラいました。
・真剣一本勝負
福男選びは年に一度だけ、1月10日の午前6時にスタートすることが決まっています。何曜日だろうがそれは関係なく、です。ちなみに、後述するスタート位置を決める抽選は前日の夕方から行われているので、福男を目指している人はそこもチェックしておくべしです。
・厳しい参加規定
先述の通り、福男選びは”神事”です。つまり、神社で行われる厳粛な行事のひとつであります。また併せて、その神事に参戦する数千の人間が、細い神社の参道を駆け抜けていくスポーツ的要素も内包されている行事でもあり、そこには危険性が伴います。
神事として開催しつつ、安全を確保する。この2要素を成立させるべく、開門神事には厳格なレギュレーションが3つ設けられています。
(1)走ることに適した紐付きの「スポーツシューズ」を着用していること。
認められない例:靴ひものないもの、ゲタ、サンダル、ブーツ、ハイヒール、革靴、カジュアルシューズ等
(2)安全で、神事に参加するのに相応しい服装をしていること。
認められない例:スカート、ズボンをずり下げたファッション、コスプレ、被り物等
(3)その他、小学生以下、および係員が相応しくないと判断した者は不可。
この3つの規定を満たすことができない人は、走ることができません。
規定チェックのために、列に並んでいる際も実行委員からの指摘が入ります。実際に私が列に並んでいた際にもダボついたスウェットやクロックスでやってきた人は、容赦なく運営側に発見された後、列から外されてしまった光景を見ました。列から外された後、規則に準じた服装に着替えたからといって列に復帰することができるかといえば、答えは”NO”。格好が乱れている時点で神事に参加する権利は、どこにもないのです。
厳しいと感じる方もいるかもしれませんが、実際走って見ると厳しくしてくれてありがとうという感想しか湧いてきません。ただでさえ将棋倒し寸前の人雪崩れが発生する状況下なのに、ふざけた格好が原因でムダな転倒が発生するなんて事は御免です。
また、後述する先着1500人のうちに入った場合、「開門神事参加心得」という実質的な参加同意書にサインする必要があります。以下のような書かれていますので、必ずチェックが必要です。
(1)走るのに適した服装をすること
(2)迷惑をかける者は参加させない
(3)上位3位以内に入ったら、年3回の行事に参加していただく*3
(4)ケガは自己責任(応急処置はするけど)
これが「参加心得」。
・抽選による位置決めー
福男選びでは開門前、最前列からスタートできる「Aブロック・Bブロック」の320名を決めるくじ引きを行います。
このなかでもAブロックに入らない限り、福男にはなる可能性は非常に難しいものになります。。開門と同時にスタートできるのはたった320名だけ。あとの人達は、開門からほんの少し待ってからスタートなので、240mと短く、狭い西宮神社の参道で抜くことは容易いことではありません。
そして「A・Bブロック」入りを決めるくじ引きに参加できるのは、前日の夕方ごろから並んでいる抽選列の先着1500名まで。だいたい9日の午後8時30分あたりがそのボーダーラインとなります。*5これ以上遅れたら何かラッキーな事ない限り、最前列に並べません。
実践編:前日~当日はどのように行動していくか
【移動編】:交通手段はどうするか
では、福男選びに参加するにあたり、どのように行動していけばよいのでしょうか。
西宮までの移動手段は主に関東圏の場合、3パターンに分類することができます。
この三種類です。
最短ルートは、新幹線と飛行機。新宿から約3時間30分、東京駅からでしたら約3時間で西宮神社に向うことが可能で、これは午後4時に出発したとしても西宮には7時半ごろ到着する計算となり、都心で働いていふ社会人でも半休申請や早引きをすれば、仕事後に福男選びに参加することが可能です。*6
バスですが、大阪行きの夜行バスがバンバン出ているので、それを利用してみるのが策でしょう。うまく行けば片道6000円程度で向うことができます。
【当日の宿泊場所はどうするか?】
漫画喫茶・コインロッカーについて
以下の地図に後述する漫画喫茶・コインロッカーの位置を記載したGoogle mapを添付致します。参考になれば幸いです。
※ちなみに、コインロッカー(駅)だけアルファベット順に記載されていますが、これは筆者が勧めたいランキングでもあります。利用しやすい順に並べたと言い換えてもいいのかな。
※できるだけ、野宿(謎)はしてほしくないので、漫画喫茶を地図に落としてみました。ちなみにこの時期の西宮は当然の如く寒いです。
※今後、情報が増えていけばその都度更新する(かもしれません)。
※グルメスポットや聖地巡礼ポイント(謎)は気が向いたら更新します。
仮に福男選びを本気で狙う場合、おそらく最大で3時間ほどしか寝れないでしょう。
というのは、先述したスタート位置を決めるくじびきの開始時刻が遅いからです。
無事1500人の抽選をパスし、くじを引けるのは10日の深夜0時から。そして無事A・Bブロックで走れることが決まった場合ですが、再び西宮神社前の正門に集合する時間がとても早いです。ブロックごとによって集合時間は異なりますが、だいたい午前3時や4時。多く見積もっても、わずか2時間半しか睡眠時間を確保できないのです。
↓
私が参加した2015年の参加者レポート(青クジを引いた人)がありましたが、やはり午前3時でした。赤くじ(最前列の人)だと集合時間が違うらしく、Aブロックの人は4時に集まっているような記述が。
その短い時間でいかに睡眠を確保するか。睡眠が勝負を左右することがあるのです。
※2006年に参加した方のブログを読んでいると「4時半に再集合した」とかそういう情報があるみたいですが、近年は集合時間が早くなっているみたいですね。
宿泊/仮眠方法
- ホテルで宿泊
- 漫画喫茶
- レンタカーで車中泊
この3点の手段が考えられます。
「ホテルで宿泊」
ホテル泊のメリットは、後述するコインロッカーの使用が不要で、荷物を預けることができること。ですが、西宮神社周辺はビジネスホテルの数が少なく、最も近くて阪神西宮駅隣りの今津駅にあるホテル千歳(西宮神社から約3km)です。西宮神社からの距離が遠くなればなるほど、仮にAブロックからのスタートとなった場合早起きしないといけないので、睡眠時間が削られてしまいます。
それ以外ですと
HOTEL シティーイン 西宮やU's香櫨園などのラブホテルしかありません。
もしも屋根付きの建物で寝たいと考えているならそれを使うのもひとつかもしれません。当然ですが、ラブホテルの場合荷物預かりは基本ありません。
「漫画喫茶」
西宮神社周辺で一番近いのが、
コミックバスターは2015年の遠征で利用しましたが、午前1時にダッシュで駆け込んで最後の一席を確保(しかも椅子席でした)できたレベルで、行けば泊まれるという保証はありません。あと、荷物預かりがないのでコインロッカーを利用する必要があります。
※2018年追記:さくら夙川駅すぐに「リライフ 西宮店」が新たに開店しておりました。漫画喫茶としては異例の会員証不要のため、入店から退店までがスムーズです。次回からおそらく私はここを使用する予定。
「車中泊」
前述したホテル(ラブホテル)泊や、漫画喫茶よりも確実で、駐車場さえ確保できればそこで仮眠することも可能です。
阪神西宮駅の近くには、「トヨタレンタリース神戸阪神西宮駅前店」や「ニコニコレンタカー阪神西宮駅前店」「日産レンタカー阪神西宮駅前店」など、幾つものレンタカー点が存在します。
そして駐車場ですが、阪神西宮駅の周辺にはタイムスが2箇所、リパークが2箇所、ショウワパークが1箇所、市役所前の公共駐車場と、こちらも駐車する場所に困ることは無いかと思われます。コインロッカーを借りる手間もありません。
ファミレスという手段も考えてみましたが、阪神西宮駅近くにはサイゼリヤくらいしかない(しかも午前2時まで)ので、財力に余裕のある方やしっかりしている方はホテルや車中泊をするのが賢明かと思います。
福男に参加している方のブログを見ると、車中泊を実行している参加者の方は結構多く、私が見た限りでは車中泊or自宅に戻るor満喫。このいずれかに絞られます。
コインロッカーを利用する(漫画喫茶、ラブホテル泊は特に)
漫画喫茶やラブホテル泊の場合、荷物を預けることができないので、荷物がかさばる場合はコインロッカーを利用する必要があります。
コインロッカーを利用する方の移動手段は徒歩であるという前提のもと、自分の集合時間に十分に間に合うことを加味して、西宮神社から徒歩20分圏内の駅にあるコインロッカーを絞り込むことにしました。
さてその駅ですが、以下の4つです。コインロッカーのサイズ、ロッカー数、場所、利用時間それぞれ駅によって異なります。なので細かく分類し、どこが利用しやすいロッカーなのか、西宮を訪れる前に検討してみることにしました。
以下、私の主観ですがオススメ順に並べております。
オススメ順で並べた、と先ほど書きましたが、この中でも特に私がオススメしたい駅は阪神西宮駅と香櫨園駅です。
阪神西宮駅
阪神西宮駅は西宮神社から丁度1キロと、比較的近い距離にあるのでアクセスは良好です。また、コインロッカーも駅の両側にあるため個数も多いです。
ただ、この地域でも大きい駅であること+西宮神社から近い ということから、前日には殆どのロッカーが埋まってしまいます。2015年に筆者が参加した際は前日の9日、午後4時に西宮駅に到着したのですが、殆どのロッカーが埋まってました。なので早めに確保することがミッションです。
香櫨園駅
阪神西宮駅でもコインロッカーが確保できなくなった場合、穴場でオススメなのが香櫨園駅でした。西宮神社から500mほどしか離れていないのに、コインロッカーは殆ど空いているのです。阪神が全部「利用中」の表示なのに。
というのも、香櫨園駅のコインロッカーはこの周辺では唯一駅構内にあるタイプなのです。つまり、終電と共にロッカー荷物の出し入れができません。
パッと見すこぶる不便なのですが、西宮弾丸組にはいいセーブポイントになるのです。だって1度荷物を下ろした後、走り出すまでは基本的に走れる格好で過ごすことを実行委員会がルール付けているのですから、くじ引きが終わったあとコインロッカーに向かうようなことはないのです。ラブホテル、満喫勢にとっては有効利用の手段の一つとして機能するはずです。
JR西宮駅
JR西宮駅は、一見名前だけ見るとJRということでそれなりに充実した施設環境が整っていると想像する方も多いかと思いますが、福男的にはこの駅はあまりオススメできません。まず、神社から駅まではとても遠いということ。徒歩30分近くかかってしまうため、何か取りに行こうと思っても神社からの距離を考えると相当のタイムロスになってしまいます。
更に、コインロッカーが12個しかなく、9日の時点で満杯になっている可能性が高いです。というか、福男でなくても普段から利用されている方々も多く、殆ど埋まっています。あまりお勧めしません。
スタートまでの流れ:服装は?スケジュールは?
さて、長時間列に並び続け、なんとか先着1500人以内に入り、開門神事参加心得にも必要事項を記入しました。
いよいよ、スタート位置を決めるくじ引きです。
くじを引く順番は、先ほど並んだ順番通りにそのまま引きます。赤色のくじを引くとAブロック、青色のくじを引くとBブロック、それ以外はハズレとなり、Cブロックからのスタートとなります。
改めてですが、A・B・Cブロックがどのような区分けなのかを簡単に書いていこうかと思います。
Aブロック=福男の最低条件はココ!
Aブロックは100人。赤門の最前列から
Aブロックの最前列は、いわばF1でいうポールポジション*8の位置なのです。
これが引換券。これをなくすと走れなくなる可能性もあるので注意。
ブロック通過の御朱印。不正がないよに徹底的にチェック。
そしてCブロック(はずれくじを引いた人・抽選に参加していない人たち)は午前4時~4時半くらいから先着順で並ぶことができます。このブロックの人たちはA・Bブロックの人たちが出発して少し間が空いてからスタートとなります。
走る際に持って行くべき服装
午前3時に呼集がかかると、基本的にスタートの午前6時まで半分拘束されたようなものです。再度のルール確認、お祓いや実行委員とのご挨拶などなどです。この時間は
この時間は、ボルテージを少しずつ上げていく時間です。高揚感に押され、これから共に走るその日会ったばかりの参加者と仲良くなることがあるのも特徴です。*9*10*11
さて、拘束時間の中服装はどうするか?コインロッカーに荷物を取りに行くこともできません。
【仲間がいれば】
4時半と5時半くらいに行われるウォーミングアップは、拘束が一時解かれます。この時間を利用して服を着替えたり、荷物の預かりが可能です。それ以外はコミュニケーションをとることくらいでしょうか。出走者の周りを警備員が囲んでいるため、やりにくいです。何もしないことがベストかと思います。
【単独の場合】
単独参戦の場合はどうでしょう。2015年に参加した際の私は、周囲に知り合いもおらず、孤立無援、まるで硫黄島の日本兵です。途中で厚着から薄着になることもできない。
ならばと思い、以下の格好で臨みました。
・インナー一枚
・サイクルジャージ(半袖)
・アームウォーマー
・ウィンドブレーカー(上下)
・アンダータイツ(スパッツ)
です。 イヤーカバーや手袋も持っていくとよりベストです。とにかくオールラウンドに対応することを心がけ、参加しました。ちなみに、他の参加者もわりかし厚着です。ランパンランシャツのヘンタイさんはいませんでした。スウェット風の人もいました。なので服装に関しては風邪をひかない程度に動きやすい格好であれば、あとはどういう格好でもオッケーです。
というわけで、あとは走り出すだけ。
このブログ記事が読まれるのはたぶん年末とか年明けになるかと思いますが、そこで福男を目指している方の参考になって頂けたらたら嬉しいです。
では、皆さんの無事を祈って!
*1:「初見で〜」っていうところはアーツさんの影響をモロに受けています。詳しくは虹色志向の自転車マガジン「シクロポリスVol.9」を参照してください
*2:門の前に並ぶ人を決めるために、福男では2回の抽選を行います。それについては後述。
*3:義務だったりします。必ず誓約する必要あり。
*4:↑のブログにも書いてありますが、1つでもサインし忘れると失格扱いになって福男になる権利を事実上失ってしまうみたいですね。恐ろしいぜ実行委員会。
*5:2015年に私が参加した際はそうでした
*6:できれば、走る前に下見をすることを推奨します。お昼くらいから出発できる人は西宮に着いたあと幾分余裕があると思います。普段神社の参道を走るようなことはないと思うので、ぜひチェックを。
*7:リンク先のサイトですが、全国各所のコインロッカーが設置されている駅を写真付き、かつコインロッカーの大きさ、料金、個数まで抑えておりとても便利です。いったいどんな暇人だかわかりませんが、このような方のおかげで前回は遠征を行うことができました。感謝です。
*8:最前列レーンのこと。スタート位置が最も前ということは、当然ですが後ろの位置からスタートするよりもフィニッシュ地点から最も近いということにもなるので、ここはハズせないところなのです。
*9:2015年はまず最初に「開門神事保存会」の実行委員による挨拶とかからスタートしました。歴代の福男選びで一番福になった方々が実行委員を務めており、この方達がいるおかげで不正も危険も極力抑えられた運営ができていると感じました。この場を借りて御礼を申し上げます。
*10:陸上をやっている方なら、過去5回一番福になり、100m10.42のベスト記録で走っている吉田光一郎さんも「開門神事保存会」の一員として参加していました。アレです。「福男スプリンター」の人です。僕は中学生の時からホームページを見ていたくらいのファンだったので、お会いできて嬉しかったです。
*11:ちなみに2015年は出走前に黄色い軍手を渡されました。これは岩手県釜石市で東日本大震災を機に、福男選びを参考にして生まれた「韋駄天競争」の人たちとのつながりを意味するらしいです。2014年に韋駄天になった方がこの日やってきました。