さわらいど

さわらいど

ブルベ6年目の大学生→社会人。主に自転車ロングライドが中心。山形転勤おじさん。酒田の地から。

【BRM920 ええじゃないか伊勢夫婦岩1000】 その3 DAY1(後) 中津川→愛西

9月20日(土)PM6:00 スタートから12時間経過 200km地点、岐阜県中津川市

 

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▼ついに岐阜県へ!!

 

 暗闇の道を下っていると、遠くにキラキラした街が見えた。あれが中津川かあ。実感が全然わかない。*1

 

 

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街に降りても、そこで泊まることはできない。

再び集落がある山奥の集落へ抜けていく。

 

集落は危険な道ばかりだった。

軽自動車が一台通れればいいくらいのスペースの道。ガードレールもないよく見ると、真っ暗で遠くから水の音が聞こえる。落ちたら二度と戻ってこられない、なおさら誰もいない、死んでしまう。更にグレーチングに引っかかり落車しそうになった。*2

 

 

ようやくここで先行していたPIPIさんと合流することができた、200.1km地点、通過チェックのセブン-イレブンに18:38に到着。ようやく全体の1/5の行程を終わらせ、2時間ほどの余裕を確保することに成功した。

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この時点で気温は14℃。 凍てつく寒さが襲う。

 

 

またコンビニ飯。ジャンパラヤだけでは飽きたらず、カップヌードルのチリトマトも買って外で食べていた。めっちゃ寒い。

 

久々にフィリップさんたちと会った。いつもと違う険しい顔。

「つらさしかねえ」と吠えている。

 

他の参加者からは

「蛭川峠って一番ヤバイとこなんだよね?今までの峠なんて前菜だよ」とか

「ここから山道だし、熊も出るし、キツイから。俺ここでやめようかな~」

という言葉も聞こえてくると、さすがにテンションが下がっていく。

コンビニで30分休憩し出発。

 

 

 

真っ暗な県道を左折し、ここまでは順調だった。だけど、さっきから「熊」というワードが頭にちらつく。街灯もない道に差し掛かった途端、ついに恐怖で一歩も動けなくなってしまった。なさけない!

 

後続を待つことにしたけれど、なかなか来ない。10分ほど待つと、後ろから眩しい自転車のライトが見える。「いくぞ!」と思い、トレインに乗った。

 

3人位だったトレインはしばらくすると分裂し、僕ともう一人だけになってしまった。元気で優しい印象の男性はシンさん*3という方で、なんと僕のことを知っていた。どうやら同じチームのナオキさんやしほさんと繋がりがあるらしく、そこから知ったとのことだった。しばらくご一緒させてもらうことに。いよいよ最終関門にして今日のメインディッシュ、蛭川峠の入り口に差し掛かった。

 

▼魔境、蛭川峠

 

http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=1dc34531fcfbd3fd7675bdbb5e87ff49

距離3.2km。 平均斜度10.6% 片道一車線の林道。それが蛭川峠。

 

 

県道を左折すると、それまであった街灯はひとつもなくなり、闇の世界が広がっていた。と、急に勾配がきつくなり、ペダルの回転数が落ちていく。

 

真っ暗で見えないけれど、どうやらもうすでに峠の入口に差し掛かっているようだった。林を切り開いて作った道路は狭く、車一台が通れればいいほうだ。道路脇には車が捨てられていて、窓ガラスは割れ錆びついていた。

 

「ここで足をつけたらマズい、マズイ予感がする。」

僕はそう思った。

 

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写真はR東京。*4

 

 

シンさんに「そろそろ終わりですよね?」って言ったら、

「まだまだここからだよ。」なんて言われた。もう帰りたい。

ついに錯覚を見始めた。平坦だ!と思ったら斜度が緩くなっただけ。

ほんとに帰りたい。けど、帰ったら半年の思いがムダになるだけだ。

 

 

 

 

カーブミラーが増えてきて、頂上に近づいているのがようやくわかった。できるだけ前に進むために、浮き上がってウィリーしそうな前輪をこらえて押さえつけ、全力でペダルを踏み続ける。

 

傾斜がゆるくなった。今度は幻じゃない!!

僕の声が、静寂の峠に響いた。

「よっしゃあ! 終わりだああああ!!」

子供のように大声を上げて、シンさんと喜びをわかちあった。

 

 

最大にして、最高の難所。215.9km地点、蛭川峠。

20:08、山頂到着。 出せるパワーを全部出しきった。

 

 

▼救い

 

地獄から這い上がってきたような峠を攻略したら、今度は下り。

シンさんのダウンヒルについていく。自転車がすれ違えばいいくらいの道。時速40km。ライトが照らす光だけが見える。

 

 

突然、道路の落ち葉にタイヤをとられた。目の前は右ヘアピン。コントロールを失い、とっさにブレーキをかける。ブレーキレバーを握る手に力が入り、ボロい自転車みたいな摩擦音がする。制動できない。ギリギリのところで踏ん張り、闇の向こうへ落ちていくことだけは免れた。呼吸が乱れる。

 

一息つく暇もなく、今度は野生動物が横切る。

下手なジェットコースターよりスリルがある。今度スリルを求めたい人がいれば、ぜひ夜に自転車でダウンヒルをすることをオススメする。

そこでは、自分の想像以上にとんでもないことが待っているはずだ。

 

ようやく峠を脱出することができた。しばらく平地だ。前にいた集団と合流し、その中にピピさんを見つける。観光地の坂折棚田は、真っ暗闇で何も見えない。意地で真っ暗な写真を撮って

「これが日本棚田百選に選ばれた 坂折棚田だ!!」とツイートする。

 

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もはや、ここに来たという証明はこれしかなかった。*5

 

中津川市境のキツイ山道をやっと通過したら、今度は山奥の県道に入る。

もちろん、街灯なんて存在しない。あるのは、自転車のライトだけ。

 

この世の終わりのような気分、精神的にボロボロになっていた。

しばらく進んだだろうか、真っ暗な農産物直売所の脇に光るテント。

なんだろう…シンさんが喜んだ顔で言った。「シークレットPCだ!!」

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テントを仮設して作られたシークレットPC。まこたさんやバッキーさんがいました。

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まこたさんのファイティングポーズ。やったね!

 

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スタッフからココアを一杯貰う。全身が内側から暖かくなっていく。

この時のココアがブルベ中1番美味しかった。こんな寒いところで待ってるR東京のスタッフさんたちに感謝。

右端はシンさん、真ん中青のジャージは「チーム亀太郎」のチームメイト、PIPIさん。

そして端っこが僕。顔が死んでます(^q^) 

 

▼ついに、愛知県へ。

チョコとココアを補給して、シンさんとPIPIさんの3人で再スタート。酷道の代わりに新しく作られたバイパスを経て、街へ下る。

10kmのストレートだ。

 

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冬季凍結防止のために道路に縦溝が作られていた。それにハンドルを取られてしまうと全然コントロールができない。転落しそうになってヒヤヒヤ。

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時速60km出てます(^q^)

 

バイパスの駐車場には、その走りやすさからか、走り屋の車が何十台も止まっていた。その脇を時速60kmで通り抜けると、誰かが「うおーっ!!!」と叫んでいるのが聞こえる。

確かに深夜に走ってたらびっくりするだろうな。

 

  ようやくふもとの町に降りることができた。暖かい。ようやく寒さ、暗さから開放された。着ていたウィンドブレーカーを脱ぎ、戦闘モードへ入る。前を走っていた二人組を吸収して、ここから可児までPIPIさんとシンさんたちの爆走に付いていった。残りは32kmぐらいなのだけれど、眠くてしょうがない。

 

11時くらいに、愛知県に入っていることに気がついた。

今朝山梨を出発して、今愛知県にいること自体が信じられない。

 

「0時までに一宮に着きそうだ」という会話のとおり、280km地点、一宮のPCには23:52に到着!当初の予定よりも1時間ほど速くつくことができた。この近くにホテルを確保しているシンさんとはここでいったんお別れ。お礼を言った。同じ満喫に泊まるPIPIさんにも「4時に満喫を出発」と約束して先に行ってもらうことにした。

 

ピルクルに救われる

 

 

実は、相当このとき胃の調子が悪かった。街へ下る時に寒くて内蔵を冷やしたうえ、先ほどの爆走列車に付いていく時に胃が荒れてヘロヘロになっていたのが多分原因だろう。ブルベでは、固形物が食べられなくなると完走は難しい。エネルギー補給が追いつかず、エネルギー切れなんてことだって考えられる。どうしよう、焦る。そんな時、以前黒澤さんが「ピルクル」という乳酸菌飲料を薦めていたことを思い出した。効くかわからないけれどとりあえず飲んでからしばらく休んでみると、「あれ?楽になったぞ?マジか!」と動けるようになった。固形物も食べることができる。恐るべしピルクルパワーを実感しつつ、再スタートを切ることができた。

▼おはようからおやすみまで 

 

爆音をかき鳴らすバイクが多い深夜の一宮市街は、信号が多い上に単調で眠くなる。市街を抜け出し木曽川沿いを走ると、真っ暗でひたすら寂しい気分になる。この河川敷沿いの道がなかなか油断のできないモノで、自動車通行防止用のバンプで転びそうになって気が抜けない。おまけにどこで曲がればいいのかわからず迷子になったりした。

 

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満喫*6に着いたのは午前2時10分ごろだった。PIPIさんの自転車がきちんと置いてある。リクライニング席を選び、アラームを午前3時50分にセット。これでやっと長いこの一日が終わるのか・・・。

ウィンドブレーカーをかけて、1時間ほどの眠りについた。

 

 

 

つづく。

*1:実は、この時のブルベでも有数の景色を眺めることができる場所でした。写真を撮ろう…と頭の片隅で思いながら、結局自分が止まるのがいやで撮影ポイントを逃してしまったということを今でも明確に覚えています。写真を撮りたいと思ったら撮ったほうがいいです。マジで。

*2:ここでリアライトが脱落した時に気づきました。ほんとにやばかった。

*3:sin3だった。今では千葉ジャージを着ている印象だったけど、この時も千葉ジャージだったような記憶が…

*4:))

 

 

重力とのケンカが始まる。

登って早々、後ろからシンさんに「登り始めで13%入った~ヤバイ!」と情報が入った。斜度を聞けば聞くほどツラい。斜度なんて聞かなくても、この峠はツライことはわかっているくらいだ・・・。

 

脚に力が入らないほどキツく、ダンシングでも精一杯だ。

 

頭がいたくなる。乳酸がたまって視界がゆがんできた。

スピートメーターは1ケタの数字を指している。

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写真はR東京の提供。僕じゃないけれど、蛭川ってこんなとこ。

 

 

恐怖の度合いは、標高が高くなればなるほど増していき、ついに「熊注意」の看板が見えた。冷や汗なのか暑いのか、もはや全然わからない。

怖くて、普段では出ないくらいのパワーが出ているのだと思う。

終わりのない生き地獄だ。

 

時折、「ガサガサッ!!!」という音が森の向こうから聞こえる。

これが風の音じゃないことだけは、わかる。

そこから逃げたい一心で、ペダルを回し続けた。

寒いのにヘルメットから汗が落ちる。一人で走っていたら発狂していた。((「R東京のスタッフがおばけとして出てくるかも」とかそんな会話をしていた記憶がある。しゃべらないと精神的に持たなかった。

*5:後日、ズッチャさんが日中走って通過した時の写真を見せてくれた。綺麗なところです。

*6:ちなみに、