【BRM920 ええじゃないか伊勢夫婦岩1000】その2 DAY1前編 スタート→中津川
ぱちり。
寒さで目が覚めた。周りは数時間前と同じ、真っ暗。
時計を見ると、午前5時、予定通りの時間に目をさますことが出来た。周りを眺めると、他にも何人か寝ているみたいだった。寝間着からジャージ姿に着替え、戦闘モードに入り出発の支度をし、部屋を出る。いつもより時間の流れを遅く感じている。緊張してるみたいだ。
チェックアウトするために、カウンターへ向かうと、僕が所属している「チーム亀太郎」のすーさんとけーこさんに出会った。
ふたりとも「規格外」という言葉が似合うようなランドヌールで、すーさんはフォースSRを獲ったことがあるし、けーこさんは寝ないで走り続ける。そういう意味で「規格外」なのだ。
すーさんは8時スタートだけど、速いからいつ追いつかれるのだろうか。「リラックスリラックス!お互いに頑張ろう、まだあとでね!」と励ましてくださった。けーこさんとは、合宿以来だ。けーこさんにも「緊張してるね、夏休みけっこう走ってたよね、早くなったんじゃないの?」なんて励まされてしまった。
チェックアウトをして外に出ると、うっすらと雲が全体にかかっていて寒い。スタート地点の駐車場へ向かうとすでにスタートの受付を始めていて、僕と同じように黄色い反射ベストを着た人たちが集まっていた。妙な緊張感と、高揚感を感じる。
この日は、一日中山を登り続ける。
ルートはこちら。
峠だけでも富士見峠、杖突峠、火山峠、飯田峠、大平峠、馬籠峠、蛭川峠…と7つの峠を超えなければならない。全行程で最も厳しい登りが続き、この日だけで4200m登る。山梨⇛長野⇛岐阜⇛愛知の4県。
この日僕が仮眠ポイントに選んだのは320km地点、愛知県愛西市、立田大橋近くの漫画喫茶だ。ちなみに、PC3が隣にある。
漫画喫茶に着く時間は、理想として午前1時ごろ。そこを4時に通過することは決めていたので、3時間の睡眠時間は欲しいところだ。その睡眠時間は、僕がこの日走った分だけ作ることができる。飯田峠から蛭川まで、マージンを稼ぐのは絶望的、それ以外の区間でどうやってマージンを稼ぐかが今日の勝負だ。
テントが設営されていた。この日はR東京のスタッフとして活動している、しほさんとナオキさんたちに挨拶をして、スタート受付を済ませた。新しいデザインのブルベカードは、水色で格好いい。
前日に切れてしまったサイコンのタイラップも、ナオキさんが一本持ってくてくださったお陰で無事治すことができた。ここで同じ7時スタートでチームの仲間、グルべライダーPIPIさんと、ジロウさんとも挨拶できた。「コーヘーくん、元気してた?」今日はジロウさんも緊張しているのかな。
主催者によるコース説明、ブリーフィングが始まった。7時スタートの参加者が一斉に集まる。50人くらいか。R東京代表のチャーリーさんが説明をする。「前半の300kmを速く通過すること、つまり一宮に遅くとも4時までに通過できるかが、この1000kmを完走するカギ」だそうだ。その他は路面の注意事項などについて、いつものブルベと同じだ。
参加者の記念写真を撮影して、車検へ。
さあ、終わらせたら出発だ・・・。と思っていたけれど、なんと前日に買ったリアライトがうまくはまらずに。直しているうちにみんな車検を終え、結局最後尾あたりからのスタートとなった。
そんなこんなで、やっと自分も車検を終わらせて、いよいよ出発だ。正面には昨日も見たあの「伊勢夫婦岩START!!」の横断幕が。緊張で背中に汗を書いていた。でも戸惑っている暇はない。とにかく行こう。
20日午前7時、横断幕の下をゆっくりと抜け、75時間、1000kmのロングライドが始まった。
▼スタート~茅野
スタートして間もなく、後ろに2人ライダーがいることに気づいた。
「あれ、俺より遅くスタートした人いたんだ?」と思い後ろを振り返る。速い。ちらっと後ろを見るとMTB。あの人しかいない。でも、もう一人もMTB。
誰だろう?甲府駅近くの踏切で追いつかれた時、ようやく誰かわかった。僕はちょっとぎこちなく、話しかけた。
「フィリップさんと…チャリモさんですか?」
髭を生やした方が答えた。
「あ、そうですよ!コーへーくん…かな!?」
フィリップさんは髭がダンディーなナイスガイ、チャリモさんはとても若く見える好青年。ふたりとも、気さくな方で話しやすい方だ。前者はMTBランドヌール、後者は聖地巡礼ライダー。この2人に共通しているのが「4ケタ」を走っていること。とんでもない人達だった。
挨拶をして、2人に僕はついていくことに。でも、それもほんの一瞬だった。
MTBなのにめちゃくちゃ早くて、*2僕が坂を登るのに苦労していると後ろから何食わぬ顔で僕をパスし、その後視界から消えてしまったからだ。
再び一人旅だ。
やたら今日は交通量が少ない。そうだ、今日は休日だったんだ。時々通る車のエンジン音以外は、びゅうびゅうという風を切る音だけ。自転車に乗ってて一番楽しい感覚かもしれない。
盆地の甲府の街を抜けだすには意外と坂を登らないといけない。
アップダウンを経て、郊外に飛び出した。ここから長野県まで一本道だ。
▼沿道の応援
スタートから1時間くらい経っただろうか、甲州街道に差し掛かった。それまで甲州街道というと都内の狭くゴミゴミしたところしか走ったことなかったけれど、さすがに山梨も西の方まで出ると快適になる。進路を北西にとり、前へ進んでいく。
それにしても、道路の周辺はなにもない。コンビニも、ファミレスも、スーパーもショッピングモールさえも。あるのは畑と田んぼ、そして周辺を囲むような低い山々だけ。天に登っていくみたいだ。人工物で目立つのは「仮眠室アリ」という標識と「廃棄物処理場反対」の看板。川を横目に進む。
次々と、先にスタートしたライダー達をパスしていく。ひとりづつ、淡々と。途中、ジロウさんもパス。ピースサインをするほどまだまだ元気みたいだ。
韮崎を通過。とにかく50km先の杖突峠は10時に着きたい。そうすれば1時間ほどのマージンを稼げるからだ。それを目標に走り続ける。
貴重なマージンを稼ぐために、僕は「ガンガンいこうぜ」作戦だ。
先ほどと同じ景色。だけど少しずつ斜度がきつくなり、標識には長野県の街「茅野」の文字が出てきた。早くも脚がつらい。頑張っていないのに汗が出てくる。ダンシングで登っていると、犬の散歩をしていたおじいさんの「がんばれ!」という声援が聞こえた。手を振って応える。
▼富士見峠
スタートから2時間ちょっと。47km地点、橋を通過するときに「長野県」の標識が見えた、富士見峠へのアプローチが始まった。バイパス道路だからか、トラックの交通量が多く、僕の腕をかすめていく。僕は斜度のきつさとかより、こういう交通量の多い峠が一番苦手だ。塩尻峠とか大嫌いだ。
悪態をつきながら登っていると、前方にピンクのジャージを発見。けーこさんだった。いつもよりゆっくり走っている気がする。「あれ、けーこさんっていつもこのペースだっけ?」と思った。ちょっと心配だ。でも声をかけると「大丈夫」というので、僕は先を急いだ。
ダンシングをして峠を超えた。そしてすぐ下りに入り、今度は重力から開放され、遠く続く一本道の果てに小さく見える街へと惰性を利用して降りていく。スピードが上がり、景色が流れていく。車と同じくらいのスピードで走っているのが信じられないくらい。
茅野へのダウンヒル
諏訪湖沿いにある茅野という街に入った。ここまで頑張った甲斐があってか、目標どおり、10時ジャストには杖突峠手前にあるコンビニまで辿り着いた。ちょうど1時間ちょいの余裕を確保。
下りからお腹がペコペコで死にそうだったので、そのコンビニで朝食を食べることにした。外に座り込み、買ったおにぎりを一口ほおばる。頑張ったあとのおにぎりがおいしい。のんびりしてるとサカイさんとジロウさんがやってきた。「お腹すいたー」といいながら店内に入っていくのを見送り、再スタート。10分ほど休めただろうか。
▼プロの走り
いよいよ第二関門、杖突峠へのアプローチを開始する。700m登り、標高は1300mまで達する。平均車度は6%。どちらかといえば、走りやすい。
甲州街道をはずれ、明るいトンネルを抜けると、本格的な登りに入る。8月に亀太郎の夏合宿で走ったということもあり、それほどキツさは感じない。足に重力がかかり、スピードメーターは1ケタの数字を指す。ゆっくりと、無理をしないペースで登り続けることが大切なのだと自分に言い聞かせて登り始めた。走っていると、ロングタイツが蒸れて暑くなる。足元のジッパーを膝上まで上げて体温を落とす。
そんな矢先。突然後ろからものすごいペースで一人のローディが登ってきた。ブルベを走っている人ではなさそう。「ここらへんに住んでいる人かな?」なんて最初は思っていた。でもよく見ると反射ベスト、元プロのランドヌール、ズッチャさんその人だった。「ひっぱってくれてもいいんだぞ、若者~~」*3と言いながら、僕との差を更に広げていくズッチャさん。追いつこうと思ってダンシングをするも結局追いつけず、視界から消えた。そんなことで、ヘロヘロになりながら僕は峠を登り続けた。
頂上近くまで登った時、駐車場の近くに展望台があることを思い出し、そこに立ち寄ってみることにした。展望台入り口には入場料100円を入れるようにと書いてあり、コインケースが置いてある。お金は払わなくても大丈夫っぽさそうなのだけれど、一応入れておいた。
ギシギシ音を立てる展望デッキに出ると、さっきの下りで見たよりも雄大なパノラマが目の前に!青い諏訪湖、となり町に向かう電車や車は豆粒サイズで、よくできたジオラマを見ているようだった。
▼デコイ
杖突峠を超えると、緩やかで長い下りに差し掛かった。山あいに挟まれた集落の間を走り抜ける。中央構造線の沿いに走るこの区間は、集落があるにもかかわらず、信号がない。それほど、人がいないのかもしれない。
何もしなくても時速40kmに達し、するりするりと景色が流れていく。笑ってしまうほど楽しい。ジェットコースターに乗っているみたいでいい。途中見た車は、農耕車だけ。
気分が高まり、誰もいないのを確認した後「ふぉーーー!」と叫んだのは内緒。
そんな浮かれた気持ちを一気に引き戻したのが、道中行われていた取り締まり。秋の全国交通安全運動期間中だったため、警官も多くいた。別に何か悪いことはしているわけじゃないけど、その横を通るときは一応スピードを下げていった。警官が立っていたので、軽くお辞儀をする。全然反応なし。よく見ると警官に似せて作られたデコイ(作り物)だった。
ちょっとびっくりして「なんだよ、本物じゃないのかよ!笑」とひとりごとを言っていたら、今度は本物の警官が目の前にいて「わっ!」と声に出してしまった。はずかしー
そんなこんなであっという間に、桜が有名な高遠という小さい町に入った。高遠城址公園を通りぬけ、通過チェックポイントへ。時間制限のないチェックポイントだ。
スタートから4時間39分。
最初の通過チェックポイント 91km地点のセブン-イレブンに11:39に到着。
マージンは1時間ほど。
急いでコンビニに入ろうと駐車場を見ると、よく見たことのある車が。車の中をみると、なんと母親が!わざわざ、応援に来てくれたのだ。「大丈夫、ありがとう」と伝え、家族に無事を伝えるため、2人並んだ写真撮影をした。
ここでは簡単にきゅうり巻きと鮭おにぎりを頬張り、エネルギーゼリーを補給をして再スタート。近くにローメンという、鹿肉を使ったラーメンみたいなご当地グルメの美味しい店があるのだけれど、今回はスルーせざるをえない。
▼火山峠
PCをすぐ出発して、再び伊那谷の集落沿いを南下する。右手には駒ケ岳の山々が見える。季節柄、通りかかった近くの小学校では運動会が行われていて、お馴染みの「赤も、白も頑張ってください」と言うアナウンスが響き渡り、あたりの田んぼではトラックほどある大型コンバインが稲を収穫している。夏が終わったことに、ちょっとノスタルジックな気持ち。
「かざん峠」ではなく「ひやま峠」なのです。
しばらく走ると、再び登り。第三の峠、火山峠へアプローチ開始だ。ちょっときついと感じる。だけれども、一緒に走っていたAJ群馬ジャージを着た方が「これくらいの坂で峠って感じるんだろうかねえ~」と言ってグイグイと先に登って行ってしまった。今回はマイペースを守りきって登った。、
火山らしさを全く感じない火山峠を12時半ごろに通過。全体的にそれほど斜度はないのに、足が張っている。距離を2倍したくらいの疲れが襲ってくる。昨日それほど眠れなかったからなのか、体は正直だ。
▼伊那谷
火山峠を降りたら、今度はアップダウン。下ったら、また登り。これを何回も繰り返す。相変わらず田舎道はなにもない。コンビニさえも。こういうところは、コンビニより個人商店のほうが多かったりする。自分の地元に似た景色だった。
しばらく走ると、突然片道一車線まで道幅が狭まり、対向車とスレスレになった。キューシートには「落石・パンク注意」の表記。道には沢山石が転がっている。この辺りはブリーフィングでも言われていた危険スポットだ。
だけれども、それとは引き換えに景色は綺麗だった。長く伸びた木々が緑のトンネルを作り上げていた。上ばかり見ないように気をつけよう。
反対側に流れている大きな川はおそらく天竜川だろう。
コース自体は楽しいんだけれども、時間とのにらめっこは続いていく。この比較的平坦なところでマージンがどれだけ広げることができるのか。TTだ。
134km地点、チェックポイント(PC1)の豊岡のセブンには13:45に到着した。貯金を2時間に広げることができた。ここで先行していたPIPIさんと合流することができた。ちょうど出発するところだったので後で会いましょうと話し、一旦別れる。登りで追いつけるかなあ。
さて、ここを出たら飯田以降、峠という峠を越え、長野県から岐阜県へと向かう。途中に補給できる店は一切ないとのことだった。
ここできちんとご飯を食べようということで、結局コンビニ飯。カルビ弁当とスプライト、レモンウォーターと天然水を補給する。レモンウォーターのボトルは900mlなので、ボトルを持ってくるのを忘れた時に役立つ。これで一安心。
余談だけれども、セブン-イレブンは弁当系が最高にうまい。ファミマもうまい。ローソンは、あまり良さがわからないのだけれど・・・。
もぐもぐしてると。女性ライダーのSさん*4がやってきた。
「もー疲れちゃったよ!」なんて2人で話す。「ここからが勝負だよ(^_^)」なんていうけど、ほんとにそうだからしょうがない。
女性のランドヌール、意外と多いんだなあ。
合計25分くらい休んで出発。気を引き締めていこう。
▼日常と非日常
PCを出たらいきなり直登が始まった。息が乱れ、胸がバクバクする。まっすぐ続く登りがにくたらしい。
でも、その登りを楽しんでいる自分もいる。たぶん、どちらかといえば僕はマゾだ。
写真を今見ると、めちゃくちゃ顔が顔がぐったりしている。2kmくらい登ると、飯田という街へ向かう。汗がポタポタ滴って、目に落ちてくるのが邪魔だ。登り終えていつのまにか、後ろを見ると5人位のトレインができていた。
飯田市街に入り信号街をしていると、部活帰りの高校生が話しているのが目に入る。ふとその時、自分が非日常な感覚にいることを思い出せられた。日常と非日常の間は意外とないのかもしれない。
▼究極の山岳ステージ。
その交差点を右折し、県道8号線へ。第四関門、飯田峠への登りが始まった。
標高300mから一気に1200mまで登る。さっきまで縦一列だったトレインは一瞬で分裂しそれぞれがそれぞれのペースで登り始めた。*6林道のような細い道、ガードレールの向こう、はるか下には渓流が流れている。いよいよ携帯も圏外になり、GPSで何処にいるのかわからなくなった。今自分がいる場所を確認するには、道路脇にポツポツと立っている観音様と地元住民が作った地名入りの看板くらい*7しか手段はなかった。
途中、こんな地名も。今ならダメだろう。
10km以上登り続けると、なにか禅修行のような感じで心が無になる。
サクソバンクジャージを着た方とペース的に同じくらいだ。一緒に進むことにした。人と話すと辛さも紛らわすことができる。
1時間半ほど登っただろうか。頂上の手前で「ここは勝負平」という標識看板が見えた。
そこだけが平坦になっていて、昔は合戦でもあったのだろう。
僕にとってこの登りを諦めるか、それとも頑張るか。まさに勝負だった。
迷わずダンシングで通過する。心が折れたら終わりだ。
158.7km
第五関門飯田峠の頂上には16:06に到着した。もう戻れないところまできてしまった。
▼大平宿の出会い
登りはここで終わりじゃない。100mほど下ったら今度は大平峠を登らないといけない。どうせなら一回で登り切りたいのだけれど、そうはされてくれないみたいだ。軽自動車が軽いクラクションを鳴らして、通り過ぎて行く。
車の中からおばちゃん達が「がんばれ~!」と声をかけてくれた。
山の中腹に差し掛かると、廃村となってしまったかつての宿場街、大平宿に。かつては住んでいたであろう建物がポツポツと見えた。
明治時代には宿場街だったという、大平集落。
1軒だけ、人が住んでいそうな建物を見つけた。よく見ると、さっきのおばちゃんたちだ。「大変だったでしょ~、ここですこし休みなよ~」と声をかけられた。だけど僕はここで休むと後が休めなくなる。「ごめんなさい。でも、声かけてくれてありがとうございました!」と言い、再出発。
帰ってから知ったのだが、ここはボランティアが整備している建物らしく、今でも宿泊ができるとのことだった。
おばちゃんの隣にあった樽には、川の水でキンキンに冷えたビールがあったのを今でも忘れられない。あそこでやめても最高だろうなあ。なんて。*8
そうこうしているうちに再び上りにさしかかり、息が再び荒れる。
「なんのために登っているんだろう? 」*9
164.6km地点。第5関門大平峠には16:35に到着。標高1300mまで登ったのか。めちゃくちゃ寒い。ウィンドブレーカーを着た。
目の前の土管のようなトンネルが。山の下をくぐるためのトンネルでもない、なぜか道路のど真ん中、そこにポツンと”あった”。
トンネルをくぐると、それまで鬱蒼としていた緑だけの世界にオレンジが差し、やがてすべて開放され、一面オレンジの世界へ。太陽の温かいぬくもりが寒さで震えていた体を癒してくれた。
あれは、ワープトンネルだったのか!
1200mからのダウンヒル。木曽谷へと降下していく。途中のお茶屋さんでスタッフカーを見つけたので、いったん休憩。ビューポイントからの景色がいいというので見てみると、どこまでも続く山のシルエットとその間を通り抜ける道が見えた。
スタッフカーが途中で譲ってくれた。迷わず先行する。
ツールの選手になった気持ちだった。
ジェットコースターのようにうねうねとしたヘアピンを降りるのは、ちょっとしたテーマパークのアトラクションみたいだ。ブレーキを掛けて対向車両に気をつけて走ればいい。
オレンジ色の木漏れ日が指し、地面には落ち葉や、トゲトゲとした栗の皮が落ちている。この山に住んでいるサルが食べたのだろう、中には食べ散らかした跡もあった。
やがて広い道に出る。あたりはすっかり暗くなり、視界には山だけが見える。しばらくすると、「馬籠峠左折」の標識を確認し、第6関門、馬籠峠へと差し掛かった。
▼空はなんて一面のマーマレイド!
ギアを一番軽いインナーローにして10km/h程度で走れば、問題ない。キューシートには「激坂注意」と書かれているだけあってなかなかつらい。段々暗くなり、焦りが増す。途中誰かを抜いたのだけれど、それがPIPIさんだということはあとで気づいた。
そして184.8km地点長野と岐阜の県境、馬籠峠には17:48に到着。
まだ1/5も終わっていないのか・・・。
先に峠にいた人にちょっと話してみよう。
「何時スタートですか?」
「9時スタートなんですよ、ちょっと遅いんですけれど…」
( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン 速い。あまりにも早過ぎるよ。
「僕7時スタートなんです」って言えなくなっちゃったじゃないか。笑*11
今日はやたら速い人と話をする気がする。そんな脚があったら観光もできるんだろうなあ、とポツリ思う。
ところで、馬籠峠という名前の通り、ここは中山道の宿場街、馬籠宿が下りの途中にある。暗くなってきたが、無事見つけることができた。
江戸時代は交通の要所で、江戸からやってきた人がここに泊まり、京都を目指していた。結局、僕も似たようなことをやっている。
一面マーマレイドのような空。忘れられない。
次第に青黒く染まり、伊勢1000は初めての夜を迎えた。
つづく。
*1:早々たるメンツ。チャリモさん、フィリップさん、A埼玉な人たち、などなど・・・
*2:しかもめちゃくちゃ雑談をしながら
*3:「若者」は出走前のAJ中目黒で会話した際についた名前。
*4:@pon_noripiさんのこと。
*5:ちなみに、ばっきーさんが公開した写真だと、この僕の目の前にがんちょさん(@gan_tyo)が走っていました。完走後にそれに気付いたのです。
*6:事前情報だと、事前部分試走していたPIPIさんの「ここらへんに猿がいて、襲われなくてよかった」という話を耳にしていて、ピリピリしながら登っていたのを思い出しました。汗タラタラで登っています。
*7:情報求む。
*8:更に言うと、おじさんに「自転車降りてビールでもどうだい?」と薦められた。丁重にお断りしたけど、最高であることには変わりがない。
*9:このあたりで1回だけPIPIさんと遭遇。
*10:写真、これもがんちょさんだったことに気づく。今考えるとがんちょさんペースで走っていた自分って…
*11:Iさんだった。
ロードバイクで1000km 72時間でお伊勢参り! 甲府スタートのブルベ 三重県で折り返し横浜まで (ローラー台のお供) - YouTube